やたらと推される「英検」の謎

学習塾の仕事をやっていると不思議に思うことが多々あります。

その中のひとつが「英検」です。

 

正直、個人的には

「英検はいらない」

と思っています。

 

理由は色々ありますが、

「英検の合格が学力を保証できていない」

というのが一番不味いと思う点です。(後述します)

 

英検を持っていると入試で有利に??

中高生の生徒さんやその保護者の方から

「英検って受けたほうが良いですよね?」

と相談されることが多々あります。

 

「学校の先生が『受けたほうが良い』って…」

「学校で申し込んで集団で受検するし…」

「仲の良い友達も皆受けるって言うし…」

「なんだかとても大事なことのような気がしてきて…」

「受けないと大変なことになるのでは…?」

と不安になる方もいらっしゃるかもしれません。

 

大丈夫です!受けなくても損しません!

 

最近は大学入試改革に関連して

「有利になる」「大学入試で使える」

とか言い出だす人もいますが、(学校の先生でも多いらしいですが)

現状だと準1級以上を取れないと意味無いです。

「準1級以上ならみなし満点/加点にする」

という国公立大学や私立大学はあります。

英語が得意な子は準1級を取れれば多少有利になるでしょう。

英検準1級取れるなら、センター英語で180点は取れます。

しかし、英語が苦手な子が準1級にチャレンジするのはどうでしょうか。

英検取るより、普通に受験勉強した方が賢いです。

ちなみに、

2級ではセンター英語で120~140点程度でしょうか。

ネットで検索すると

2級で「150点以上取れる」とか

大学センター試験より簡単でMARCHより難しい」とか

ちょっと不思議に思える記述も見られます。

検索するとこれらが上位にくるのだから頭が痛い不思議ですね。

こういうサイトを読むと、英検を素敵に書いてあります。

英検2級もなんだかすごそう!!

に思えてきますが、残念、錯覚です!

 

話を大学入試に戻しますが、

英語が得意で、準一級以上を持っている/取れる

というのなら優遇されるのもわかりますが、

英語が不得意だから、英検を取って優遇されよう

というのはちょっと無理があります。

英検2級程度で優遇されるなら誰でも取ります。

現状、私立大の一部で多少有効とかその程度です。

2級は別にそんなにすごくないわけです。

 

高校卒業時点で、取得級と世間の評価は

生徒「英検1級取得やで!」

周り「英語得意なんや!すごいやん!!」(賞賛・大)

 

生徒「英検準1級取得やで!」

周り「英語好きなんや!すごいやん!」(賞賛・小)

 

生徒「英検2級取得やで!」

周り「へー、英検とか受けたんやな」(無関心)

 

生徒「英検準2級取得やで!」

周り「ん?何で準2級?」(困惑)

 

みたいな感じじゃないでしょうか。

 

ついでに、

「英検の勉強(学力)は大学入試でも役に立つ」

といった主張もよく見られます。確かに同じレベルの単語・熟語などが

使われるかもしれませんが、そもそも各試験が求める学力が異なります。

大学入試なら大学入試に合わせた学習を進めるべきでしょう。

実際に英検2級・準1級・1級、センター試験、各大学の入試を何度か

解けば、試験の難度や試験が求める学力の違いもわかると思います。

大学入試に直接関係のない、違う形式の検定をわざわざ受ける、

つまりわざわざ回り道をする必要があるでしょうか。

 

将来的に大学入試改革で変わる部分はあるでしょう。

しかし、現状では

英検は大学入試ではほとんど意味が無い

と言えます。

 

さて、高校入試に関しては、お住まいの地域で違うでしょう。

私の住む長崎県佐世保市の高校入試なら無意味です。

入試で優遇されるもなにも、競争率が1.5倍もありません。

落ちないように普通に受験勉強しましょう。

 

英検持っていてもテストで低得点

私が英検について最初に疑問に思ったのは、6年ほど前です。

塾に入ってきた小学高学年の生徒Yくんについて、

「幼少から英会話に長く通い、英検3級を持っている」

と保護者の方から聞きました。

うちの塾は小学生の英語に力を入れていませんので、

「英語はできるだろうから、うちで英語は教えなくていいのかな」

という程度の認識でした。

 

そのYくんが中1になるとき、英語も教えることになりました。

ふと「どれくらいできるのかな?」と思い、

中3にやらせていた英語の小テストを一緒に解かせてみました。

同じ教室で勉強していた中3生の子達に、

「中1に負けないようにね!」

と冗談半分に言っていたのですが・・・

どうもYくんの様子がおかしいのです。

ほとんど解けず、簡単な問題すら間違えてボロボロ・・・

地元進学校志望の中3なら最低でも70点以上、

英語が得意なら90点以上取る基礎的なテストでしたが、

Yくんは30点ほどしか取れていませんでした。

「ん??これで英検3級合格??」

と驚いたのが英検に対する不信の始まりでした。

 

その後、Yくんの学力をじっくりみていったのですが、

文法も単語もめちゃくちゃ、「何となくリスニングは得意」という程度。

英検のことなんて聞かなかったことにし、基本からやり直しました。

(中学校3年間はしっかり勉強させ、元々真面目な子だったこともあり、

中高は好成績をずっとキープし、地元進学校ではトップ層にいます)

 

それ以外にも、英語塾や英会話に通う生徒さんや保護者の方から

「英検○級持ってます(キリッ」

と言われ、実際にテストをすると全然できないというパターンは多く、

(もちろん、ちゃんと学力がある子もいますが・・・)

学年以上の級を取っている場合は、特にできない傾向が強い印象です。

合格してるのに…本当に不思議ですよね。

 

合格しても低学力の謎

何でこのようなことが起きるのか、

それは合格に必要な得点率が原因です。

英検の合格率と得点率ですが、下表の感じだとお思いください。

(近年は合格率が公表されていないようですので、合格率は

あくまで過去発表のものからの推測にすぎません)

合格率 一次試験得点率
1級 10%前後 70%前後
準1級 15%前後 70%前後
2級 25%前後 60%前後
準2級 36%前後 60%前後
3級 53%前後 60%前後
4級 70%前後 60%前後
5級 82%前後 60%前後

得点率を見ていただけるとわかりますが、

2級と準1級で10%も違います。

「2級以下は合格させる試験、準1級以上は落とす試験」

になっているのと私は思っています。

それにしても2級以下の60%という得点率はちょっと甘すぎます。

 

たとえば中3の子が英語のテストで65点を取ったとして、

それで「中学の英語ができてる!」なんて誰も思わないでしょう。

仮に70点だったとしても、十分とは言いがたい。

少なくとも75%か80%以上のラインが妥当でしょう。

英検はなぜこのように甘いのでしょうか。

 

2級以下の受検者は小中高校生が中心です。

不合格だと格好が悪いし、落ち込みます。

次からは受けなくなります。

合格したら嬉しいし、自慢できるのでまた受けます。

2級までは学力不足で得点率が多少低くても合格させる!

準1級以上は英語が得意・好きで受ける人たちです。

不合格でも何度もチャレンジしてくれます。

準1級以上は厳しくても大丈夫!むしろ権威が高まる

 

2級を「一般生徒の到達点」に設定し、そこで切り替えると

受検料収入が美味しいんでしょう。

しかし、教育としてはどうなのでしょう。

 

2級以下は60%以上で合格

やはり一番問題なのは、

2級以下では60%ちょっとの得点率でも受かってしまう

という点です。

 

さらに、英検は

選択式のマークがほとんど

ですから運もあります。

英検は年に3回もチャレンジできますが、

学力はギリギリの子が、何度もチャレンジして合格する…

何度も落ちながら、諦めずに頑張って合格した!

と表現すれば、教育的には良い響きなのでしょうが…

検定として

「相当の学力を有している」ことを保障できるのか

甚だ疑問です。

英検3級だと下図のような感じでしょうか

 

 

 

 

 

 

 

 

英検の運営団体が英検3級の目安にしている

「中学卒業程度」は、

出題される文法や単語、文章レベルについて

であって

合格ラインのことではない

のでしょう。

結局は

p:「英検○級合格に合格している(できる)」

×↓↑○

q:「英語ができる」「英語の学力が高い」

つまり、

英語の学力が十分あれば英検○級に合格するが、

英検○級に合格していても、相当の学力を有しているとは

必ずしも言えない。

ということでしょう。

もちろん他の試験についても同様のことは言えますが、

ここまでひどいギャップはないのではないでしょうか。

 

私が見てきた

英検○級を持っていても、英語ができない子達

はこういう理由で存在するわけです。

「英検は『英語能力の検定』として正しく機能している」

そう言えるのでしょうか?

 

おわりに

英検の文句をたくさん書いてしまいました。

英検が好きな方や英検を生業にされている方は

「英検」が変だとは思わないのでしょうか。

純粋に「良い」と思っていらっしゃるのでしょうか。

それとも「お金になるから利用している」だけでしょうか。

不思議です。